この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

「DXしなきゃ」と思いつつ、何もできていない経営者へ

建設業の経営者から最も多く聞く悩みがこれです。

  • 「DXが大事なのはわかる。でも何から手を付ければいいのかわからない」
  • 「アプリを入れたけど、現場が使ってくれなくて結局紙に戻った」
  • 「IT企業の営業に勧められるままツールを入れたが、効果が見えない」

DXの失敗パターンには共通点があります。「ツールから入る」と失敗する。「課題から入る」と成功する。

DXの前に確認すべきこと — 「デジタル化」と「DX」の違い

デジタル化DX
定義紙をデジタルに置き換えるデジタルを使って業務の仕組みそのものを変える
紙の日報をExcelにする日報・勤怠・原価管理を一元化し、リアルタイムで経営判断に使う
効果作業時間の短縮経営の意思決定スピードの向上

中小建設会社はまず「デジタル化」から始めて、段階的に「DX」に進むのが現実的です。いきなりDXを目指す必要はありません。

段階的に進める建設業のDX

まずは自社の「ムダな時間」を洗い出す

DXの目的は「ツールを入れること」ではなく「ムダな時間を減らすこと」です。まず、自社でどこに時間がかかっているかを把握しましょう。

建設業でよくある「ムダな時間」:

業務ムダの内容月間の浪費時間(目安)
現場写真の整理撮った写真をPCに取り込み、フォルダ分け、台帳作成20時間
日報作成手書きの日報を事務所でExcelに転記10時間
勤怠集計手書きの出勤簿を月末にまとめて集計24時間(3日分)
工程表の更新ホワイトボードや紙の工程表を手動で修正8時間
見積書作成過去の見積もりを探し、コピーして修正15時間
書類の探しもの紙の図面・書類をキャビネットから探す5時間

やり方: 1週間、自分と社員の業務時間を記録してみてください。「これ、本当に必要な作業か?」と問いかけるだけで、驚くほどムダが見えてきます。

最も効果が大きい1つを選ぶ

洗い出したムダの中から、最もインパクトが大きい1つを選びます。

選び方の基準:

  • 月に何時間ムダにしているか(多い順)
  • 関わる人数が多いか(全員に影響するものが優先)
  • デジタル化の難易度が低いか(簡単なものから着手)

中小建設会社で最初に手を付けるべきは「勤怠管理」か「現場写真管理」のどちらか。

理由:

  • 全社員に影響する(効果が大きい)
  • スマホ1つで始められる(難易度が低い)
  • 法令対応にもなる(2024年問題対策)

ツールを3つ比較して1つ選ぶ

1つに絞った課題に対して、ツールを3つだけ比較します。10個も20個も比較すると決められなくなります。

比較のポイント:

項目確認すること
建設業の導入実績建設会社での実績があるか。オフィス向けツールは現場に合わないことが多い
スマホ対応現場でPCは使えない。スマホだけで完結するか
操作の簡単さ50代・60代の職人でも使えるか
料金月額いくらか。初期費用はあるか
デジタル化・AI導入補助金対応補助金を使って導入できるか(※最新の登録状況は公式サイトでご確認ください)
サポート体制導入後のサポートは充実しているか。電話対応はあるか

当サイトの比較記事を参考にしてください。

小さく始めて、全社に広げる

いきなり全現場に導入しない。 まず1つの現場で試して、うまくいったら他の現場に展開します。

パイロット運用の進め方:

期間やること
1週目ITに強い社員2〜3名で試す
2〜3週目1つの現場全員で試す。問題点を洗い出す
4週目問題点を改善。使い方のマニュアルを作る
2ヶ月目〜他の現場に順次展開

現場から反発が出た時の対処:

  • 「紙のほうが早い」→ 「慣れるまでの2週間だけ付き合ってほしい」と期限を決める
  • 「こんなの使えない」→ 具体的にどこが使いにくいかを聞き、ベンダーに改善要望を出す
  • 「面倒くさい」→ 経営者が率先して使う姿を見せる

効果を数字で測定し、次のステップへ

導入後3ヶ月で、効果を数字で測定します。

測定すべき指標:

  • Before/Afterの業務時間(月何時間減ったか)
  • 残業時間の変化
  • ペーパーレス化率(紙の使用量の変化)
  • 社員の満足度(使いやすさのアンケート)

効果が確認できたら、次の課題に取り組みます。

典型的なDXの進め方:

1. 勤怠管理のデジタル化(3ヶ月)

2. 現場写真・施工管理アプリの導入(3ヶ月)

3. 会計・原価管理のデジタル化(3ヶ月)

4. 各ツールの連携(データの一元管理)

5. データに基づく経営判断(本当のDX)

DXに失敗する建設会社の3つの共通点

1. ツールから入る

「ANDPADが流行っているらしい」→ とりあえず導入 → 課題と合っていない → 使われない → 解約

正解: 課題から入る。「現場写真の整理に月20時間かかっている」→ この課題を解決できるツールを探す。

2. トップが使わない

経営者が「お前ら使え」と言うだけで自分は使わない → 社員は「本気じゃないな」と感じる → 浸透しない

正解: 経営者が最初のユーザーになる。朝礼で「今日から私もこのアプリで日報を出す」と宣言する。

3. 一気に全部やろうとする

勤怠も工程も会計も写真も全部一気にデジタル化 → 現場が混乱 → 「やっぱり紙のほうが楽」に逆戻り

正解: 1つずつ。最初の3ヶ月は1つのツールだけに集中する。

建設業のDXにかかる費用の目安

ツール月額費用(20名の会社)補助金適用後(目安)
勤怠管理4,000〜6,000円/月2,000〜3,000円/月
施工管理アプリ20,000〜50,000円/月10,000〜25,000円/月
クラウド会計3,000〜5,000円/月750〜2,500円/月
安全管理アプリ10,000〜30,000円/月5,000〜15,000円/月

※補助率は年度により変更の可能性あり

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を使えば、導入コストを大幅に抑えてDXが実現できます。

詳しくは「建設業のIT導入補助金活用ガイド」をご覧ください。

まとめ — DXは「小さく始めて、大きく育てる」

建設業のDXは、難しいものではありません。スマホ1つで始められるツールを、1つの課題に対して、1つの現場で試すことから始めましょう。

今日やること:

  1. 自社の「ムダな時間」を1つだけ挙げる
  2. そのムダを解決できるツールを3つ調べる
  3. 無料トライアルに申し込む

それだけでDXの第一歩は踏み出せます。

参考情報

よくある質問

建設業のDXは何から始めるべきですか?
まず自社の「最もムダな時間」を洗い出し、最もインパクトが大きい1つの課題を選びます。中小建設会社では勤怠管理か現場写真管理から始めるのがおすすめです。
建設業のDXにかかる費用はどれくらいですか?
20名規模の会社で月額3〜6万円が目安です。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用すれば導入コストを大幅に抑えられます。
DXツールを導入しても現場が使ってくれません。どうすればよいですか?
経営者が最初のユーザーになることが最も重要です。また、いきなり全現場に導入せず、1つの現場で2〜3週間パイロット運用してから全社展開しましょう。
デジタル化とDXの違いは何ですか?
デジタル化は紙をデジタルに置き換えること、DXはデジタルを使って業務の仕組みそのものを変えることです。中小建設会社はまずデジタル化から始めて、段階的にDXに進むのが現実的です。
50代・60代の職人でもDXツールを使えますか?
スマホだけで操作できるツールを選べば十分使えます。ただし一度に複数のツールを導入すると負荷が大きいため、最初の3ヶ月は1つのツールだけに集中しましょう。
DXの効果をどう測定すればよいですか?
導入前にBefore数値(業務時間、残業時間、ペーパーレス化率など)を記録し、導入後3ヶ月で比較します。Before/Afterの数字があれば経営会議でも効果を明確に示せます。

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